一章:沖田総司とおとなげない大人たちの話

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「お野菜さんがたくさん実ってたくさん売れてくれねーと、しょっぺえ神主業だけじゃ食ってけねーんでな」 「そうですよねぇ。かくいう私も巫女業だけじゃ全然食ってけねーんですけど、どこかの優しい神主さんはお給料上げる気まったくないみたいだしなー」 「豊ぁ、俺夕方まで戻らねーからあと頼んだぞー。何かあったらいつものやつ頼むわー」 「露骨に無視!!はいはい……行ってらっしゃーい」 神主は手をひらひらと振りながら振り返りもせず階段を下りて行ってしまった。 土いじりが大好きなあの大きな子どもに、いつか神罰が下りますように!! 豊は神主の言いつけを守り、大人しく境内の掃除に取りかかる…………ような、真面目な人間ではない。 どうせ見られてないんだし、掃くそばから桜の花びらは降り積もってくるし、それなら後でまとめてやろ。 豊は竹箒を投げ出して、腰に挿していた横笛を取り出した。 夜のお座敷で披露する曲のレパートリーはいくつあっても足りない。 とはいえ有名な曲はいくつもマスターしてきたので、今は即興で思いついたオリジナル曲を吹くことが多い。 客にイメージをもらってその場で作る名もなきそれが、そこそこ喜ばれたりする。
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