一章:沖田総司とおとなげない大人たちの話

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「聞いてくれェ、近藤さんよォ!」 「ん?どうしたどうした」 永倉がおいおいと泣き真似をしながら近藤の背後に隠れる。 「見てたろ?総司のヤツ大人げねェよなァ……自分より弱い相手に手加減ナシで打ち込んできやがんだ!」 沖田はムッとして永倉を睨んだ。 「僕は永倉さんのことを自分より弱いだなんて思ってませんよ」 絶対に負けたくない相手だからこそ、手は抜けないのだ。 それでも勝てないときだってあるくらいなのに。 「んー……俺が思うに、なぁ。新八は少し自分を過小評価しすぎじゃないか?」 「へ」 近藤はニカッと笑う。 「お前の剣の腕は新選組内でも明らかに群を抜いてるし、総司もそれを認めてる上で負けたくないと思ってるからこそ、お前との手合わせに手を抜いたりしないんだろうさ。お前はお前が思っているよりもずっと強い男だ。俺が保証する。だから自信を持て!な?」 この人は恥ずかしげもなく大真面目にこういうことを言ってのける。 負け一つでうじうじしてる俺の方がずっと恥ずかしいじゃねェか……! ぐっと唇を噛んだ永倉を見て、沖田はふわりと笑った。 「わかってもらえたようで良かったです。僕と永倉さんとの勝負に今更手加減なんて失礼なマネはしませんよ。いつだって本気で全力です。僕は貴方に負けたくない。永倉さんも、僕を殺すつもりで本気で戦ってくださいね」 「永倉さん"も"ってなんだよオイ……本気で戦うって、お前俺のこと殺すつもりで打ち込んでたのかァ!?」 いつまでも鼻垂れの泣き虫なガキだと思ってたのは俺ばっかりだったみてェだなくそ!! 一人復讐の闘志を燃やす永倉だったが、そんな永倉の視線に気づいていながら涼しげな顔をしている沖田。 いまいち空気を読み切れない近藤は沖田と永倉が和解できたことに満足げな様子だ。 その明らかな温度差に、原田と藤堂は胃がキリキリと痛んだ。
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