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「そんなことがあったせいで、結局僕が食べようとして楽しみにとっておいたお団子は斎藤さんのお腹に…………って、土方さん聞いてますか?」
「聞いてねえ」
「少しは悪びれてくださいよ、でないと僕のお団子も報われません」
立ち止まって遠くを見ているのは泣く子も黙る新選組の副長、土方歳三。
そしてそれを呆れたように見上げ、頬を膨らませているのは新選組の一番隊の隊長、沖田総司だ。
ここからがこの話の面白いところなのに。
「どうしたんですか?可愛い女の子でもいたんですか?」
土方が思わず足を止めるほどの美女とは?
沖田も多少の興味が湧いて、その視線の先を辿る。
「あれ?山崎さんだ」
「やっぱ烝だよな、アレ」
「女の子と一緒にいますね」
「後ろ姿じゃ顔がわからねえが、あのうなじは間違いなく美人だ」
「さすが、百戦錬磨の女たらしは顔を見なくてもうなじだけで女性の器量がわかってしまうんですね」
「言葉に悪意を感じんぞオイ」
「あ、バレました?」
「総司ィ、歯ァ食いしばれや……」
土方が拳を固く握りしめた瞬間、沖田は手を振りながら笑顔で山崎の方へと走り出した。
「おーい!山崎さーん!」
美人の前では土方も無闇に暴力を振るえないだろうと判断した沖田の勝利だった。
「げ…………」
「おーい!」
「………………」
「おーい!おーいってば!おい、露骨に無視かコラ、今顔逸らしましたよねバレてますよ山崎さん!」
沖田に肩を叩かれ観念したのは新選組の諸士調役兼監察の、山崎烝だ。
山崎は心底うんざりしたような顔で沖田を見た。
「も~……何の用ですか~?あんた普段街中で俺のこと見かけても話しかけてなんて来ないじゃないですか~」
沖田と山崎はあまり仲が良くない。
どちらも仕事はできるのだが、仕事に対する姿勢が正反対でどうも考え方もことごとく合わないらしい。
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