序章:兄をたずねて十四里

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「え~……こちら、豊(ゆたか)です~。豊、この人たちは俺の上司の土方歳三さんと、同僚の沖田総司さんだよ~」 「豊と申します」 丁寧に頭を下げた豊を見て、土方と沖田は顔を見合わせた。 本当に山崎とこの少女は血縁関係にあるのか? 見るからに大人しそうで、清楚を体現しているような少女と、"あの"山崎が? 「ちょっと~?お二人とも今なにか失礼なこと考えませんでした~?」 スーパー監察の目は誤魔化せないようだ。 土方は咳払いをひとつすると山崎に向き直る。 「オホン。ま、まぁ、なんだ……お前にこんな可愛らしい妹がいるなんて知らなかったよ」 「可愛らしい、ねぇ…………まぁ、土方さんには言ってませんでしたしね~」 「僕も知りませんでした」 「沖田さんにも言ってませんし~」 「あ?じゃあ誰が知ってんだよ」 「さぁ……自分のことなんて聞かれなきゃ話しませんもん~。でも島田さんには話したかもしれませんね~。あと源さんも知ってるかも~」 それと、と山崎は当然のように言う。 「近藤さんも知ってるはずですけど~」 「俺は近藤さんのみならず、源さんや島田にまで何かで負けたのか……」 「色々あると思いますけど一番の敗因は人徳じゃないですか?いてっ」 土方は沖田を殴って黙らせた。 「で?お前はこんなとこで妹捕まえて何してたんだ」 「あ~…………」 山崎は視線を逸らして言葉を濁す。 あまり話したくないことのようだ。 「説教ですよ」 凛とした声が響いたので、沖田は視線を豊へ向ける。 「説教……ですか?」 豊はむっと頬を膨らませて腰に両手を当てている。 「そうです。お説教されてたんです。私が」 山崎は気まずそうに肩を落として目元を押さえた。 「豊さん、何かやらかしたんですか?」 沖田は興味津々だというような、とても楽しそうな顔をして聞いた。
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