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「っ……」
息を呑んだ。そしてすぐにダイヤが霞む。溢れる涙で指輪どころか直矢さんの顔も見られない。
直矢さんは私の左手を取り、指輪をそっと薬指にはめた。指輪はなんの引っ掛かりもなく私の指にぴったりはまる。
「サイズ……どうして?」
指のサイズを教えたことはなかった。どうして直矢さんが知っているのだろう。
「銀翔街通りの宝石店で指輪を見ていたでしょう」
そういえば七夕祭りの作業の合間に立ち寄った宝石店で指輪をはめたことがあった。
「美優がはめたのを見ていたので、あとでこっそりお店の人にどのサイズをつけたのか聞きました。一番気に入っていたというこの指輪を美優にと買いました」
そんなことをしていたのかと感激した。
宝石店前の飾りつけ中に窓の向こうから見て一目で気に入った指輪があった。買うつもりもお金もなかったけれど、一度だけでも指にはめてみたかった。あのときの指輪は一度だけのものではなくなった。
私の前にひざまずいた直矢さんは私をまっすぐ見つめる。
夢のようだけれどこれは嬉しい現実だ。何度も何度も夢見てきた直矢さんとの未来が叶う。
「美優、結婚してください」
最高の愛の言葉を最愛の人は繰り返し伝えてくれる。だから私は最上の愛を込めて直矢さんにキスをした。
END
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