イーブンゲーム

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イーブンゲーム

 真城凛は、早足で階段を上がり、混雑したホームを人の合間をぬって歩いていた。三人ずつ並んた列の最後尾に並ぶ。  少し乱れた呼吸を整え、手に持っていた電子マネーパスを鞄のポケットにしまう。 四月から高校生になったけれど、朝のラッシュにはいつもうんざりする。  この時間の登りの電車は混んでいて、お気に入りのブレザーの制服もいつももみくちゃにされてしまう。  電光掲示板には急行電車の表示。  凛はやがてくる戦いに備えて、心の準備をする。  ふいにポケットの携帯電話が震えた。 『おはよ。りっちゃん。私、今電車の中』  手帳型のカバーを開くと、親友のまなみからメッセージがついていた。  井上まなみとは、小学校の時からの仲良しだった。中学では一緒に陸上部に入ったが、高校は別々のところに進学していた。  通学電車の中からメッセージを送っているらしい。 (手持ちぶさたなのかな)  彼女の乗っている電車はすいているのかもしれない。その余裕が少しうらやましかった。 『おはよう。今駅。こっちはこれから、乗車率200パーセントに突撃だよー』 『ねえ、りっちゃんはもう高校でカッコイイ人みつけた?』     
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