ドラマチックなタクシードライバー

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 前を走る車を追う――テレビドラマの刑事物では、すでに使い古されたシーンかもしれません。私も一度や二度と言わず、多く目にして参りました。場面としては短く、ほとんどは主人公である刑事役の方が車へと乗り込み、発進するまでが映し出されているかと思います。走行中、そして停車までの情景はカットです。それはそうでしょう、いくら運転手にスポットライトを浴びせたとしても、地味な描写が続くだけで面白くも無いでしょうから。  しかし実際……現実問題になりますと、ハプニングの連続で毛頭退屈な追跡では御座いませんでした。  まずは赤信号。これはもう、どうしようもありません。追えと言われましても、通行の禁止が道路交通法で定められております。法を破ってしまえば、私も犯罪者の仲間入りです。あっ、いえ、かつての私は彼を犯罪者と決め付けておりましたので……その、誤解なきように訂正致します。彼は犯罪者では御座いません。どうも失礼致しました、お許し下さいませ。  赤信号を前にし置き去りにされた次の台詞も、悪人のそれでは御座いません。 「っ……っ……畜生が!」  振り下ろした拳で、太ももを大きく叩き付けたのも焦燥からです。威嚇だとか、脅しだとも見受けられますが、そのような行為に及ぶことは一切御座いませんでした。ただの、私の勘違いです。  それでも動揺を隠しきれない私は、あらん限りの知恵を振り絞り脳内で近辺の地図を連想させておりました。言わずもがな、回り道を駆使し車を追いかける為で御座います。このように一生懸命になるのは、創業に至る際の地理試験以来でした。     
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