ドラマチックなタクシードライバー

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 その甲斐もあってか、どうにか探していた車を見つけることが出来たのです。私も追いかける事に集中していたので、八木さんが乗っていた車のナンバープレートは記憶しておりました。結果として、それが功を奏したのでしょう。追越し車線を用いて、なんとか後ろにつけることが叶いました。後部座席の彼も、安堵からか額の汗を拭います。  けれども一安心は……出来ません。  暫く走り、これで命が助かると油断しきった私を嘲笑うかのように、赤のスポーツカーが割り込んで来たのです。  淀んだ黒煙をフロントガラスに吹き掛け、私の視界を妨げます。例え一台だけであったとしても、それは追跡を削ぐには十分過ぎる理由になるのです。それだけ、あの忌々しい赤信号で置いて行かれるという可能性が増すのですから。私も苛立ち、無意識の内にクラクションに手を伸ばそうとしていたのが、なんともお恥ずかしい限りで御座います。  話の流れ的に……私のポンコツ車両と前を行くスポーツカーでのカーチェイスが繰り広げられるだろうという予測をされた方々には大変申し訳御座いませんが、そのような事態には発展致しませんでした。  私が追うべきタクシーは制限速度をきちんと守り、辛抱耐えかねたスポーツカーは追越し車線へ行き、あっという間に見える範囲から消えてしまったのです。  なんともまあ、その運転手も先を急いでいたのでしょうね。 ▼△4▼△  思い返してみれば、僅か十数分足らずのことでした。  私と八木さんの車が止まった先、つまり到着した目的地は――大きな病院で御座いました。     
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