ギネの暴君 その1

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決定は覆らなかった。 この細川という女医は医大の同級生だ。性格は女王様のようなドS体質で、彼女の言葉のムチで叩かれながら、私の麻酔科研修は始まった。 「バカの一つ覚えじゃないんだから、ちゃんと考えなさいよっ!」 と罵倒された直後、「考えるんじゃないわよ。体で覚えるのよ!」と真逆の言葉が飛んでくる。 私はその矛盾だらけの指導に必死に耐えた。だが、彼女のドS体質が人気を呼び、同僚の研修医の中には、「細川先生に赤いパンプスを履かせて、踏まれてみたい」などと言い出すヤツもいた。 麻酔科の研修が始まって2ヵ月、私は整形外科、形成外科、皮膚科、耳鼻科、外科など色々な科の麻酔を経験した。そして、ついに私は産婦人科の宮本准教授の手術の麻酔デビューを果たした。 私はこれからどうなるのか? おそるべき戦いが待ち受けているとは知る由(よし)もなかった。 (つづく)
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