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「ちょっとお話しない? この前言ってた話だけどさ」
この前言ってた話? なにかそんな話しましたっけという顔をしていると、
「ほら。山本さん『プロですから』って言ってたじゃん。あれ結構気になっていてさ」
なるほど。確かに言った気もする。なんなら常々言っている。声に出したい日本語暫定一位、プロですから。
「よく覚えてましたね。確かに言いました」
「だろ?」と花井さんが笑う。少し日焼けした顔に白い歯が光る。めぞん一刻の三鷹さんみたいだなと思ったが、多分伝わらないので言わない。
「あんまりそういうこという子いないからさ。ちょっと話したいな、なんて」
「なるほど分かりました。そういうことなら」
「ホント? よっしゃ! じゃあ場所は……」
キョロキョロと見渡す花井さん。冬の空に煌々とさんざめくマクナルの看板を一瞬見たが、ちがうよなーという顔。うん、確かに違うね。
「向かいのカフェでいい? 別に飲むわけじゃないし」
「いいですよ。どうぞよろしくお願い致します」
相変わらず堅いなぁ、と笑う花井さん。
私は自転車を押して、花井さんは原付を押して向かいのカフェに向かう。時刻は10時を少し過ぎたところ。
「原付って押せたんですね」
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