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べつにおばちゃんがぴーちくぱーちく喋っていてもそれほど気にならない。自分は自分だし、おばちゃんはおばちゃんだからだ。ところが目の前の花井さんは、それが気になる様子?
「どうして?」
「えっ?」
「どうして気になるんですか。おばさま方がおしゃべりしながら仕事をされているのが、そんなに気になるんですか?」
うーん、と今度は花井さんが考え込んでしまった。考える人、花井。ロダン花井。
「多分……許せないのかもしれない。いや、別に許す許さないの話じゃないけど。例えば、時給の話はあるよね。山本さんは高校生だから860円。おばちゃんは1000円。これって気にならない?」と花井さんは質問で返してきた。
そんなもんこうだ、とバッサリと切り返す。
「気になりませんね。気になりますか?」
多分今の私はそれなりにクールに、冷ややかに、そして情熱が燃え滾っているはずだ。
「気にする人が多いのは事実だと思う。ちなみに僕は、はたから見ていて山本さんと室井さんの給料格差には少々疑問を覚えている」
室井さん、ごめんなさい。名前、出ちゃいました。
「実際山本さんの働きぶりはそれはもう見事なものであるし、少なくともあの店舗では一番の働き者だと言える、と思う」そう言って花井さんは窓の外を見た。煌々と輝くMの一時。景観防止条例は大丈夫なのかしらん。「多分みんなもそう思っている」
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