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うりうりやってると、絞り切ったぞうきんからコメントがこぼれてきた。
「いや、アレだよ。色々バイトしてみろってだけだよ。だって君今着ぐるみのバイトしかしてないだろ? そりゃ着ぐるみが好きなのは分かるけど、結局なんで着ぐるみが好きなのかまだわかってないみたいだし。もっというと、着ぐるみじゃなくてもいいかもしれない。だから着ぐるみ以外のコスチュームというか、そういうのでもいいんじゃないかと思っただけ。ホントそれだけだから……そのうりうりするのをやめてくれよ!」
うりうりしているとなるほどマトモなことを言ってくる。今度から大事なことは全部うりうりしながら話そうかしらん。
「結局バイトもっといろんなのしてみたらってコト?」
「うん。それだけ。嫌?」
んー、と顎に指をあてて考える。名探偵、私。
「ううん! 全然嫌じゃないわね! なんてったって結局物産展クビになっちゃったし!」
「ええっ! そうなの! なんだよそういうことはちゃんと言ってくれよ~。彼氏だろ~」
バイトをクビになったことがそんなに重大な案件だったのか。彼にはさほど関係がないような気もしていたけれど。そう言われればそうかもしれない。
「わかったわかった。今度からちゃんと言うから!」
「絶対分かってないじゃん! 一般論として人はわかったときに『わかったわかった』とか絶対言わないって! 頼むよ~」
「男のくせに女々しいわね~。どっちでもいいじゃないそんなこと……」
「良くない! 大体君は今日も……」
くどくどくどくどと説教が始まる。夕焼けに染まる線路の向こう側を見ながら、さて、何のアルバイトをしようかしらんと耽る。マクナルでもいいかもしれないなあ……。
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