2

4/4
前へ
/31ページ
次へ
 うりうりやってると、絞り切ったぞうきんからコメントがこぼれてきた。 「いや、アレだよ。色々バイトしてみろってだけだよ。だって君今着ぐるみのバイトしかしてないだろ? そりゃ着ぐるみが好きなのは分かるけど、結局なんで着ぐるみが好きなのかまだわかってないみたいだし。もっというと、着ぐるみじゃなくてもいいかもしれない。だから着ぐるみ以外のコスチュームというか、そういうのでもいいんじゃないかと思っただけ。ホントそれだけだから……そのうりうりするのをやめてくれよ!」  うりうりしているとなるほどマトモなことを言ってくる。今度から大事なことは全部うりうりしながら話そうかしらん。 「結局バイトもっといろんなのしてみたらってコト?」 「うん。それだけ。嫌?」  んー、と顎に指をあてて考える。名探偵、私。 「ううん! 全然嫌じゃないわね! なんてったって結局物産展クビになっちゃったし!」 「ええっ! そうなの! なんだよそういうことはちゃんと言ってくれよ~。彼氏だろ~」  バイトをクビになったことがそんなに重大な案件だったのか。彼にはさほど関係がないような気もしていたけれど。そう言われればそうかもしれない。 「わかったわかった。今度からちゃんと言うから!」 「絶対分かってないじゃん! 一般論として人はわかったときに『わかったわかった』とか絶対言わないって! 頼むよ~」 「男のくせに女々しいわね~。どっちでもいいじゃないそんなこと……」 「良くない! 大体君は今日も……」  くどくどくどくどと説教が始まる。夕焼けに染まる線路の向こう側を見ながら、さて、何のアルバイトをしようかしらんと耽る。マクナルでもいいかもしれないなあ……。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加