消しゴム

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 呆然としながら、腑抜けになったようにふらりと身を起こす。  今になって……  もう二度とあいつに会うことのない、今になって。  自分の想いを、こんな風に見せつけられるなんてーー。  抑え込もうとすればするほど、思いは勢いを増して溢れ出す。  あいつにーー  俺は、あいつに何一つ言えないままーーこれからの時間を耐えなければならないのか。  ずっと側にいたかったことも。  ずっと、俺だけに微笑んでいてほしかった事も。  腹立ち紛れに、あいつの大切なものを奪い、傷つけた。  それを謝ることすらできずにーー  ただ、苦しいほどのこの想いを、黙って抱え込んでいくしかないのか。  ーーそうか。  これは……罰だ。  罰が当たったんだ。  この苦しみを、嫌という程味わえばいい。  俺は、ただ静かに自分の頭を両腕で抱え込んだ。  その時ーー  テーブルの上のスマホが鳴った。  登録がない相手らしい。番号が表示されるだけで、誰だかわからない。 「ーーはい」  警戒しつつ、応答する。 『ーーーー駿?』  電話の奥の声はーーあいつだった。  間違いない。  昔の声じゃないけれど……声変わりしても、穏やかで優しい、あいつの声。 「ーー涼太?」 『うん。 突然電話して悪い。番号わかんなかったから、友達に聞いた』  頭の中の渦は、一層ぐるぐると混乱する。  どっどっと高鳴る心臓を必死に押さえ込んで、何とか最小限の応答をする。 「……どうした?」 『実は、ずーっと昔に借りてた漫画、机から出てきてさ。……返してなかったよな。ごめん。 もしかしたら、今も探してるかもしれないと思って。 ……もし、もういらなければ、処分しとくけど』 「漫画……ああ。 ……いや。……それ、いるよ」  やっと、それだけが声になった。 『そっか。じゃ電話してよかった。 なら、近いうち、中学校の前かどこかで待ち合わせしようか。そこで渡すよ。 ……今週の金曜とかなら僕は大丈夫そうだけど』 「………… わかった。じゃ、金曜……」 『うん』 「ーー涼太」 『何?』
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