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子供の頃から、あいまいなことが大嫌いだった。
物事は「白か黒」。「ゼロか100」。「やるか、やらないか」。
そんな風な考え方しか、できなかった。
おかげでずいぶんトラブルもあったし、異性とのつきあいもさんざんだったが・・・ある意味、楽な生き方だと自分では思っていた。
両極端だと、悩むことが少ないし、後々悔やんだりしない。そんなことは「中途半端」だからだ。おれにとっては、ばかばかしい限り。
数えるほど少数しかいない「友人」の一人が、その家に行ってみたらどうだ? と話をふってきたのもーーおおかた、そんなおれの態度が気にくわなかったためだろう。
おれだってバカじゃあない。こういう性格をしていると、同性にすら好かれないのは学習済みなんだ。
で、そこに来たわけさ。
・・・どこに?
「いわくの家」。
世間でいう「幽霊屋敷」。
おれの在所の近くでーーさびれた郊外住宅街の一角にそれはあった。
なんでもずっと昔、家族が皆殺しになったとかなんとかーーそういう噂だった。
ひきこもりの・・・40代だったかな。
息子が生活態度を祖父母や父親に執拗に注意され続けて。
ある日、プッツンして。
まあ、よくある話だ。
いや、いかにもありそうな事件だ。
もっとも、そんな事件が近辺で、ほんとうにあったかどうかーー真偽は分からない。
分かったって仕方がない。
仕方のないモノを、おれは、わざわざ手間暇かけて調べたりはしない。そいつは徒労だ。あやふやなことは大嫌いなんだから。
それでも、おれがここを訪れたのは。ありふれた話だが、
出る
ーーそういうコトで有名だと。ネットやら何やらでは話題のスポットだとかなんとか。
住宅は事件以来、権利関係か何か知らないが。取り壊しもされず、次の住人も来ないまま、数十年。今では完全な廃屋だ。
そしてーー出るというのだ。
この場合、出るときたら。それは、
幽霊
だろうな。
大笑いだよな。ふつうはそう思う。おれも、そう思った。
ネットやら何やらは、みんな面白おかしく書きちらすけれどーーほとんど100%、このテの話はマユツバだ。
曖昧模糊。根拠なし。
大昔なら、
「トモダチのトモダチから聞いたんだ」
というパターン。
おれが大嫌いな代物だ。
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