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「嫌いで、否定する。
うん。立派なもんだ。大した信条だ。曖昧模糊なものは、全否定ーーか。
ふうん・・・。
だったらひとつ、確かめてきたらどうだ? ん? ネットじゃそこで、お調子者がゴースト・ハントか。わざわざ行って、行方不明になったとか。
何かを見聞きして、おかしくなって発見されたとか。
地元の消防署や警察の、なんとか言うリストの筆頭であるとか。
そんなことばかりアップされてるけどな。
そうだ。尋常じゃあない噂ってやつなら、いくらでもある。
お前はそんなもの、屁の河童なんだろ。
だったらぜひ一人で行ってーー見聞記か。そいつをネットで披露したらどうだ?
ん?
ウケルぜ・・・ひひひ」
確か、こんなしゃべりかただったかな。あのバカ。
いまどき「屁の河童」だと? 誰が使うんだ、そんな死語。
もちろんおれは、そんな真似は大嫌いだ。
けれども飲み会でーー酒も入っていたし。うっかり、売り言葉に買い言葉で承知してしまった。
まあバカな連中が騒いでる、ばかばかしいことを、こっぱみじんにするのはイイかもしれない。
気分的に。
幽霊? 心霊スポット?
ばかばかしい。
おれは、そんなもの、大嫌いなんだから。
それで夜更けに車でやってきて・・・・・・「いわくの家」の玄関口に立ったのさ。
夜闇で細部はよくわからないが、荒れ果てた庭に、みっしりとした廃屋のシルエット。
昭和の洋風建築って代物だろうか。敷地もそうだが、思った以上に大きい。
威圧的に。
なるほど気分が出ていることは認めよう。その点は、あいまいでも何でもないから。
おれは公正なんだ。
玄関のドアには何やら、印刷された紙が貼ってあったけれど、それだけ。
いや。「おふだ」ーー神札のたぐいじゃない。
管理がどーこー書いているようだが、もう、ボロボロで。
セキュリティのたぐいも見当たらないし、ドアは錆びてはいたがーーイヤな音をたてて開くんだ。 鍵も何もかかってはいない。
不用心?
確かにそうだ。
まあ、これだけ傷んだ建物だと。鍵が厳重であろうとなかろうと、入り込もうと思えば容易だろう。
もっとも最近は「放置住宅」だったっけ。
増殖する空き家が問題になっているから、お上がうるさいはずなんだが。
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