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連中は何日も何日も。廃屋のなかを微に入り細を穿って、何やら調べまわっていた。
けれど、おれがそこにいることに気がつくヤツは・・・・・・皆無だった。
おれはもう、誰にも意識されない。
それだけではなく廃屋から離れることすら不可能事・・・・・・。
その事実が、どれだけおれを苛んだことか。
想像ーーできるか?
おれの怒り、悲しみ、後悔、絶望。
あの夜。こんな場所に来る気さえ起こさなければ。
けれど。もう、何もかも、手遅れだ。
・・・・・・・・・・・・
おれは、中途半端なことが大嫌いな「人間」ーーだった。
そうだ。
かつては「人間」だった。
そうして、あやふやな噂を否定するために、この家に来た。
これまでこの家にはーー確かに「何もいなかった」かもしれない。
けれどだ。
ひょっとしたら、おれみたいな人間。
ある意味、傲慢なーー自分以外、誰もかれも見下すような人間。
そんな手合いを嘲り嗤い、弄ぶ。
形容できない、悪意のような「モノ」が潜んでいたとしたらどうだろう。
口コミやーーネットを利用して「罠」を張り巡らし。
蟻地獄みたいに、わざわざ自分から飛び込んでくるーー愚かな獲物を待ち受けているのが、この家だとしたら?
それに。
おれ以前にも同じようなめに遭って。やはり誰にも意識されなくなった「元人間」。
おれの同類が、この家のどこかにはいるのかも。
おれと同じようになすすべもなく、さまよっているのかも。
一人二人なんかじゃない。もっとずっとたくさんの。
もっとも。
「悪意」も「同類」も、おれには触れることはもちろん、感じることすらできはしない。
それらは・・・・・・今となっては、どうでもいいことだ。
そうじゃあないか。
はっきり言えるのは。
絶対確実に断言できるのは、ここは今や正真正銘の、
「幽霊屋敷」
・・・・・・だということだ。
当の本人が言うのだから間違いない。
そうだ。
「幽霊」である、このおれが言うのだから。
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