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「榊、いつまで寝てんだよ」
助手席を見やりながら言うと
座席で寝ていた狐は面倒臭そうに薄目を開け
あくびしながら「もう着いたのか?」と
身体を伸ばした。
猫のように前足で 長い鼻の先を掻く。
「おい、頼むぜ 今日も」
オレが確認すると「むう... わかっておる」と、
またあくびした。
大丈夫なのかよ...
こいつ、気分によっては適当なとこあるからなあ。
狐の榊は、空狐だ。
簡単に言えば化け狐だが、妖狐の中でも位が高い。
クリーム色の毛並みの首には ぐるりと紅いラインが巻き、二本の尾を持つ。
そして、こちらと こちらでない界を繋ぐ
門の番人でもある。
本人は 以前「齢三百」だと言っていたが...
「では、行くか」
しっとりとした黒髪に 切れ長の眼をした女。
いつもの容貌に人化けした榊が、黒いワンピースにヒールの靴の姿で、助手席のドアを開けて車を降りる。
オレも車を降りると、ドアをロックし
目的の店へと足を向けた。
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