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「ああ。 しかも エクソシストって、教会の(めい)で動くんだろ? 悪魔に憑かれたヤツを祓うにも、確か 最初は 患者を病院に行かせたりするんじゃねぇの? その辺りは厳しいみたいだぜ。 闇雲に、やたらと祓わねぇだろ」 そう言ってみたが 榊は まだ そっぽを向いている。 「じゃがのう... 」 玄翁は、黒い前脚で 枯れ葉の下の地面を少し掻き まだ不安な眼で話し出した。 「この国に宣教師がやってきた頃のことじゃ。 教えを広げることが 勿論の目的ではあるが 其奴らは、渡った場所の経済や教育の水準を上げるよう 尽力もした。 疫病などが流行らぬよう 衛生にも努めた。 そして それは、宗教上の教えによる 利他的な精神に依るものじゃった。 人々は奴らに感謝し、徐々に受け入れるようになり、やがては改宗する者も増えていった」 確か、15世紀頃だよな。 フランシスコ・ザビエルが、ヤジロウとかいう日本人に この国の存在を聞いて布教に来たのが最初で その後、他にも 何人かの宣教師たちが渡って来たらしい。 開港していた長崎で、教徒の規模を目の当たりにした 豊臣秀吉は、自分達より力をつけられるのを恐れ キリシタン追放令を出している。 これが、後の鎖国にもキリシタン弾圧にも繋がっていった。 また時を経て、明治の頃になると 日本が再び開港しても 『我らの宗教を否定するなど』と 諸外国に相手にされなかったようだ。 それで日本は また考えを改めだした... と 昔 学校で習った時に、朋樹から教科書にない補足まで聞いた事を うっすら思い出した。 朋樹の実家は神社なので、自然と他宗教にも興味が湧くらしい。
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