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「榊の予想がマジならさ、ここんとこ泰河が暇なのは、それが理由かもしれねぇよな」 朋樹が言うと、沙耶ちゃんも頷いた。 「そうね... 朋樹くん向けの依頼は ちょこちょこ入るんだけどね」 沙耶ちゃんは話しながら 慣れた手付きで サイフォンをセットする。 他の客のコーヒーの仕度だ。 「コーヒーが あがるまでに戻って来るけど、 ちょっと奥に、このお客さんの セットのデザートの用意に行ってくるわね」 沙耶ちゃんは、奥に去り際 「それ、もう 一個 食べる?」と 空のタルトの皿を指差して オレらに聞く。 「食べる食べる!」と オレらが頷くと ニコッと笑って奥のキッチンへ向かった。 「で、その祓魔 連れて来た ルカってヤツ。 どこで、おまえらが賭けやってる って 聞いてきたんだろな? その店の常連としか やってなかったんだろ? そいつも常連だったのか?」 朋樹が コーヒーを飲み干しながら言う。 「いや、昨日までの 一週間は、まったく見たことなかったけど。それ以前は ちょっとわからんな」 昨日のバーは、オレ自身も ちょくちょく飲みに行く店だ。 仕事が暇で、榊が使える と わかったオレは 顔見知りの店員に話を持ちかけ 店側は 一切関与していない という前提で 奥のテーブルを賭けに使わせてもらった。 賭けに乗ってきたヤツらも、店で何度か 見たことがあるヤツばかりだった。 あのガキにしても、ここ1~2年くらいは ちらほら見かけたことがある。 ルカは、割りと目立つ部類だ。 たぶん 一度見ただけでも、次に また会えば 『こいつ、見たことある』くらいの印象は残るだろうと思うが、昨日まで 一度も見たことはない気がする。 あの店に限らず、まったくの初対面だと思う。
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