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地下にある店は、今夜も そこそこに混んでいた。
ふつうに話すにはジャマになる音量のジャズ。
薄暗いライト。
あいまいな広さに あいまいな値段の酒。
クラブ崩れのバーといった感じだ。
「よう、タイガ」
カウンターの店員から声がかかる。
タイガ、というのは オレの名前。
泰河 と書く。
昨日と同じように 二人分のウォッカのグラスを受け取り、ひとつを榊に渡すと
カウンターの そいつに 今のウォッカの代金と
手数料の二万を上乗せして手渡した。
「昨日のヤツ、また来てるぜ」
店員は 二万をポケットに忍ばせながら、店の奥を親指で示す。
マジか... 懲りねえヤツだな。
店員に軽く手をあげると、ウォッカのグラスに口をつけながら、奥のテーブルへ向かった。
奥のテーブルには、昨夜 賭けポーカーで
連敗させた内の一人... たぶん まだ大学生が
ビールと 一緒に着いていた。
オレの姿を認めると 顔をゆがめて短く歯ぎしりをし「座れよ」と、顎で向かいの椅子を指す。
ガキの分際で生意気な...
ま、オレ
歳より老けて見られがちだけど、27だし
たいして歳は変わらんだろうけど。
「いいけど、まだ金あんのか?」
そう聞くと、ガキは また顔をゆがめて
隣の椅子に置いた自分のバッグから
封筒を出して テーブルに叩きつけた。
ふうん... どう工面したのか知らないが
やるってんなら しょうがねえよな。
あまり気は進まないが。
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