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「おい 榊、おまえ どうしたんだよ?」
店を走り出た榊は、昨夜は棲み処の山から下りて来ず、一夜 明けて こっちから山に入った。
榊は 元の狐の姿で、山の頂上付近の大きな楠の根元に 小さく丸まっていた。
「急に帰っちまいやがって... 」
オレ、あれからルカに かなり負けたしさ...
近くに寄って、しゃがんで話しかけても
榊は丸まったまま、顔を自分の腹にうずめている。
これは おかしい...
病気なのか?
いや、榊は妖狐だ。
病気やら なにやらとは 無縁なはずだ。
一緒に来た朋樹に眼を向けてみた。
「榊」
朋樹が 榊に呼びかけながら、クリーム色の背に そっと手を置く。
「なんか、怖かったのか?」
榊は びくっと背中を震わせた。
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