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「... 怖かったか、じゃと?」 榊は やっと腹から顔を出し、長い鼻先を オレらの方に向けた。 「奴は 伴天連ぞ!」 いや、バテレンて。 「何?! 榊、それは誠か?」 「わっ、なんだよ玄翁(げんおう)! いたのかよ!」 小柄な墨色の狐が、楠の裏から突然声を出した。 こいつも榊と同じく妖孤で、この山の山神だ。 「バテレン、て 宣教師のことか?」 気を取り直して聞いてみると、朋樹が 「元は、神父や宣教師のことを言ったみたいだが 今は クリスチャンのことも言うみたいだぜ。 カトリックの総称みたいなもんだろ」と答えた。 今は って そもそも今は バテレンって言わねぇだろ。 「で、なんで それが怖いんだよ? クリスチャンなんて、日本にも たくさんいるじゃねえか。それぞれ宗教の自由ってもんが... 」 「違うのじゃ、泰河よ。 榊の言う伴天連は、ここでいう お主たちのような者たちじゃ」 黒狐の玄翁は難しい顔で オレの話を遮った。
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