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「かまわないよ」
「良かった。じゃあ行こう」
屈託のない笑顔で要は僕を促した。特別断る理由もない。頷いて、僕は要と並んで歩き出す。
―小宇坂、だよな。声をかけられたとき、なんか変な感じがしたけど。気のせいか……?
僕と要は今年、三年生で初めて同じクラスになった。出席番号が前後であるために、教室で要は僕の目の前の席に座っている。
―たぶん。一言、二言くらいは話したことがあるような気はするが。こうして会話をするのは初めてだな。
妙な感覚だ、と思う。僕は要が注目するような人物ではないと自覚がある。つまりどちらかと言えば人を惹きつける魅力のある人間ではない。
だが要は違う。まだ新学期が始まって半月しか経っていないというのに、要の周囲には常に人が集まっていた。教室でクラスメイトたちに囲まれてにぎやかに談笑している姿をたびたび見てきた。
人の輪の中心にいる要は明るい。頭も良く運動もできる男だ。
有名な話で、入学してすぐの実力テストでは国語、数学、英語の三教科すべてが満点だったという。その後の中間試験と期末試験の学年順位は常に一番をキープしていた。
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