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体力測定でも学年で上位の記録を叩きだして注目を集めていたことを覚えている。
僕と要では雲泥の差がある。似ているところは一つもない。話しや感覚が合うとも思ったことがない。
―そんな小宇坂がわざわざ、僕に声をかける様子をうかがっていた……?
高嶺の花。そんな風に要のことを言う輩もいるくらいだ。
そんな要に呼び止められて、正直なところ驚いていた。
なにか僕に用があって、という感じでもない。本当にただなんとなく話しかけただけなのかもしれないが。
どうにも気分が落ち着かない。けれど決してそれを表に出したりはせず、僕は要の隣を歩いた。
駅に向かいながら他愛もない会話をする。互いの中学の出身校のことや、最近はどんなテレビ番組を見ているとか。学校から家に帰ってなにをしているのかという話になった時、要が驚いたように目をみはった。
「え、左近くんって、ファッション雑誌の読者モデルをしているの? 意外だなぁ。確かにその容姿じゃ、様になるのは想像がつくけど。そういうことには興味があるようには見えないから。しなさそうに思うのに」
「三カ月だけ期間限定で頼まれたんだ。バイト代も出してもらえるし。それにメジャーな雑誌じゃない。学校側にも許可はもらっている」
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