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「バイト代をためて、なにか買いたいものでもあるんだ」
「そういうわけじゃない。あまりにしつこく頼むからこっちが折れるしかなかったんだよ」
「人が良いんだね、左近くんは。おれとは真逆じゃん」
「……? どこが」
真逆だという要の言葉は的を射ているかもしれないが、言い方に引っかかりを感じて僕は首を傾げた。
高校の最寄りの駅に到着して改札口を通り、駅のホームに降りて電車を待つ。そこで僕は向かい側のホームからこちらをうかがっている二人連れに気がついた。違う制服を着ているから他校の学生だとわかる。見覚えがない男子学生たちだ。二人の男子学生はわかりやすくこちらに視線を向けては、こそこそとなにかを話しているようだった。
あまり良い気分じゃない。
僕が訝しんでいると、隣にいた要も二人の存在に気づいたようで、顔をそちらへ向けた。そして二人の学生に向かって、友人に送るかのようにひらひらと手を振る。にこやかな笑顔まで見せている。
向こう側にいた学生たちの態度が急変した。顔色を変え、二人の学生は慌てたようにホームを移動して去って行った。逃げ去るような姿に僕は唖然とする。
「なんだ? 小宇坂。今の二人は知り合いなのか」
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