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同じだけ年月を重ねたであろう彼の風貌は変わったようで、やはり変わっていないようにも見えた。多少髪型が変わったとか、以前よりほんの少し痩せたとか、顔つきがますます自信に満ちたものになっているとか。色々あるけど本質はきっと変わっていない。
笑み方も僕をまっすぐに見るその瞳も、以前と違わない。
僕は椅子から立ち上がると、彼に向かって腕を伸ばす。そしてその小柄な体を自分のほうへ引き寄せた。
「なんだかわからないけど。お前は僕のものである気がする。だから」
「なにそれ。……まあ、間違っちゃいないかもね」
彼が苦い笑いを浮かべる。その顔が妙に懐かしくて愛しい。
僕は周囲のことなど気にすることなく、人目をはばからず、彼の体を掻き抱く。もうたまらない。心が逸って手を出さずにはいられない。勢いに乗じて唇を重ねる。
「ん……ぅ……んっ」
彼の唇は薄くて柔らかい。この感触を僕は知っている。堪能して離すと、力が抜けたように彼が僕にすがりついてきた。僕は彼を支え、隣に座って呆れたような顔をこちらに向けている作家先生に視線を投げる。
「申し訳ありませんが。抜けさせてもらってもいいですか」
「いいよ。というか、早く抜けたほうがいいわね。私は楽しいんだけど。こんな見世物状態じゃ、みんなも私も気になって手がとまっちゃうから」
「すみません。あと、よろしくお願いします」
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