秋月のまじない

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――ワァァァッ!!  誰ともなく歓声が上がる。  そして、皆抱き合い、勝利を喜び、涙していた。その様子を見て、惣右衛門もまた目尻に光るものを浮かべていた。    それは惣右衛門も知らぬことであったが、壊滅に追い込まれたあの戦から、ちょうど十年のことであった。    兵も城も、そして大将すら失ったあの十年前。    それでも生き残った者は誰一人として、諦めなかった。 ーー負けるな! 這い上がれ!!  この秋月のまじないを胸に刻み、愛する故郷を守る為に戦い抜いたのである。    そしていかに絶望的な状況に追い込まれようとも、彼らは一歩も引く事なく、その不屈の魂を貫いたのだった。  これぞ筑前の魂。  それを祝福するかのように、いつの間にか雨は上がり、雲間から一筋の陽射しが差し込まれていた。    その光を身に浴びて、まぶしく輝いている秋月種実と恵利暢尭。  二人は高々とその右の拳を天に掲げたのだったーー
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