2人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
――ワァァァッ!!
誰ともなく歓声が上がる。
そして、皆抱き合い、勝利を喜び、涙していた。その様子を見て、惣右衛門もまた目尻に光るものを浮かべていた。
それは惣右衛門も知らぬことであったが、壊滅に追い込まれたあの戦から、ちょうど十年のことであった。
兵も城も、そして大将すら失ったあの十年前。
それでも生き残った者は誰一人として、諦めなかった。
ーー負けるな! 這い上がれ!!
この秋月のまじないを胸に刻み、愛する故郷を守る為に戦い抜いたのである。
そしていかに絶望的な状況に追い込まれようとも、彼らは一歩も引く事なく、その不屈の魂を貫いたのだった。
これぞ筑前の魂。
それを祝福するかのように、いつの間にか雨は上がり、雲間から一筋の陽射しが差し込まれていた。
その光を身に浴びて、まぶしく輝いている秋月種実と恵利暢尭。
二人は高々とその右の拳を天に掲げたのだったーー
最初のコメントを投稿しよう!