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「こんにちは。軍人ナンバーHCSYKS-79147518」
全く以てマニュアル通りというか、機械じみたアルトの声で意識が一気に覚醒した。肘掛椅子の肘かけに両肘と手首がベルトで固定されている。逃がす気はないのか足首も固定されていた。ふと流れてきた冷やりとした空気にばっと顔を上げる。顔を上げた先には、恐ろしく顔の整ったおよそ十四、五の少年が目の前に立っていた。黒無地のアルバに、金の十字架が先端に刺繍されたストラ――いわゆる神父の服を着ており、軍に似つかわしくない。
「……君は?」
「僕ですか? 軍人ナンバーISA00L-00000000です。」
整った顔の口だけが淡々と動く様子が酷く不安を煽る。それよりも、と少年は続けた。
「あなた、随分余裕なんですね。『ここはどこだ』とも『なぜこんなところに』とも叫ばない。縛られていることにも気付いていないですか?」
「そんなわけない、が……精神の限界ぎりぎりだ。ここがどこかも、なぜ知らないうちにきたのかも、君が誰でこれから何をされるかもわからない。捕虜になった気分だ」
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