某月某日

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失望した声。もはや自分の体は自分のものではない。少年の、この男の気分次第なのだ。そう気付いた瞬間、考えるより早く口が動いていた。 「許して……くれ! すまなかった、もう二度と言わない、だからっ」 「許す?」 あ、と声が漏れる。失敗した。そう直感する。 「誰が許す? たとえ僕が許したとしても、Sランクの皆が許さない」 ざくり。脇腹を針が差す。叫ぶ。 「それに、あなたを許してしまったら今度は殺されるのは僕の番だ」 ざくり。右腕を針が差す。叫ぶ。 「そんなの嫌だ。死にたくない」 ざくり。左手首を針が差す。叫ぶ。 「僕の規約に違反なんてしたくないし」 ざくり。肩を針が差す。もう叫べない。 「それじゃあ。ヨハネスさん」 喉元から血が噴き出し、床や服を濡らし、滴り落ちていく。急速に頭が朦朧とし、視界が黒くぼやけ、染まっていく。 狂ってる。 そう思ったのを最後にもう二度と私の世界に色は戻らなかった。 ――伝達。軍人ナンバーHCSYKS-79147518は無事処理終了。後始末願う。 ――応答。了解。ただちにB6-045に向かう。ご苦労だった。
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