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直帰しても良いと言われていたけれど、会社は南北書店から歩いて10分ほどだし、爆発的だというジョーのサイン本の売れ行きも気になったので、会社に帰ることにした。
「ジョーは、先に帰る? あ、でも荷物はうちにあるから、どうしよう。今日のホテルはどこ?」
南北書店のビルを出てすぐのところで何気なく尋ねた私は、すぐさまジョーに肩を掴まれることになった。
「ホテルって、どういうこと? 今日はもう、僕を泊めてくれないの?」
「え? 昨日だけじゃなかったの?」
「ひどいな、汐璃。僕を追い出す気? 僕がいたら迷惑?」
「……」
迷惑なんかじゃない。
ジョーは、優しくてカッコよくて、紳士的。
過剰に甘えてくることもあるけれど、窘めたらスッと離れてくれるから、安心できる。
だからこそ、このまま一緒にいたら、私は……。
「汐璃がどうしても嫌だというまで、僕は一緒にいたい」
強く掴んでしまってごめんね、とジョーの手が離れる。
私はそこをそっと撫でた。
「痛くなかった?」
「……大丈夫」
「良かった」
ちっとも痛くなんてなかった。
昔よりずっと力も強いはずなのに、ジョーはいつでも私を気遣ってくれる。
それに私、ジョーの温もりが離れて寂しいと感じてる……。
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