秘密のサイン

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* * * 直帰しても良いと言われていたけれど、会社は南北書店から歩いて10分ほどだし、爆発的だというジョーのサイン本の売れ行きも気になったので、会社に帰ることにした。 「ジョーは、先に帰る? あ、でも荷物はうちにあるから、どうしよう。今日のホテルはどこ?」 南北書店のビルを出てすぐのところで何気なく尋ねた私は、すぐさまジョーに肩を掴まれることになった。 「ホテルって、どういうこと? 今日はもう、僕を泊めてくれないの?」 「え? 昨日だけじゃなかったの?」 「ひどいな、汐璃。僕を追い出す気? 僕がいたら迷惑?」 「……」 迷惑なんかじゃない。 ジョーは、優しくてカッコよくて、紳士的。 過剰に甘えてくることもあるけれど、窘めたらスッと離れてくれるから、安心できる。 だからこそ、このまま一緒にいたら、私は……。 「汐璃がどうしても嫌だというまで、僕は一緒にいたい」 強く掴んでしまってごめんね、とジョーの手が離れる。 私はそこをそっと撫でた。 「痛くなかった?」 「……大丈夫」 「良かった」 ちっとも痛くなんてなかった。 昔よりずっと力も強いはずなのに、ジョーはいつでも私を気遣ってくれる。 それに私、ジョーの温もりが離れて寂しいと感じてる……。
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