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私の帯より少し落ち着いた色合いの縞の浴衣に、藍海松茶の帯をキュッと締めている。
目を見開いて、手にした扇子をパンッと閉じると、大きな瞳を線になるまで細めた。
「汐璃、よく似合ってる」
「……ジョーも、見違えたね」
日系人とはいえ、背も高く、体格も良く、顔立ちもくっきりとしているジョーに、こんなに浴衣が似合うとは、正直想像していなかった。
「汐璃と並んで歩けるように、揃えてもらった」
「私に合わせてくれたの? 好きなのを選べば良かったのに」
「汐璃と似合うことが、僕の最良だから」
「また、そんなこと言って……」
恥ずかしがる私の横にジョーは並び、二人が入る鏡に見入って、満足気に微笑んだ。
「お二人は、よくお似合いですよ」
『お二人とも』じゃなくて、店員さんまでそんなことを言う。
プロが見立てたからか、二人の浴衣が並ぶと、誂えたようにしっくり来た。
美容師さんが、ジョーの髪も整えてくれる。
サッと櫛を通したくらいなのに、触れ合う距離に、なぜか心がザワッとする。
「汐璃。夜は、何を食べたい?」
「うん……」
スッと目を逸らした私に、ジョーは視線を送り続けている。
何気ないはずのその視線に耐え切れず、私は店内をうろうろした。
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