秘密の作家

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女性向け恋愛小説の常として、ヒーローは、もちろんかなりかっこよかった。 外見や言動がスマートなだけじゃなくて、度重なる困難に立ち向かっていくタフさに魅了された男性ファンも多いというのが、専らの評判だ。 「あら。窪田さん、ジョー・ラザフォードの写真、見てないの?」 「写真が出たんですか!?」 「シルエットと横顔……っていうか、ほとんど後ろ姿だったけど。あれは、かなりのものよ」 「全然知りませんでした」 「まだ日本では、ほとんど出回ってないからね」 ハリウッドスターにも辛口の評価をする宮崎さんがかっこいいと絶賛するなら、モデル級の美女なのかもしれない。 「なんだ。窪田さんは、それで気にしてたんじゃなかったのね」 「ええ、昔から好きで。好きな作家に、少し文体が似ているんです」 文通相手の文章は、年々ジョー・ラザフォードに似てきていた。 ジョー・ラザフォードの作品を読むようになって、影響を受けているのだろう。 でも、中学の頃から文通相手の作品を読んでいる私としては、似ているのはジョー・ラザフォードの方なのだ。 「へぇ。その作家って、誰?」 実は……と話し始めようとしたところで、携帯電話が鳴った。 秋穂からだ。     
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