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部屋で俺はぶつぶつと独り言を言っていた。
俺はずっと両親の仲は良い方だと思っていた。それがいつの間にかすれ違い、お互いの気持ちが離れてしまった。父親が家に寄りつかなくなってからというもの、母親が精神的に不安定なのが心配で俺は家に戻ってきたのだった。
「ワタル、ご飯よ……」
リビングに行くと、三人分の食事が並べられていた。そのうち一つにはラップがかけられていた。
「……父さんが好きなおかずばっかりだね」
「……!!」
俺の一言で母親は突っ伏して、嗚咽を漏らした。
(傷つけるつもりはなかったのに……。今日も『やり直し』だな……)
自分の部屋に戻り、今日一日を振り返った。
「どうしたんだろ、俺。よく考えたらあのお偉いさんとは初対面じゃないか……。面接会場に居たあの女の事だって……。今までこんなヘマしなかったのになぁ……」
母親の情緒不安定が移ったのだろうか……。
しかしそれだけではなさそうだった。
最近少し、忘れっぽいのだ。
その反面、やけに昔の事が思い出されて同じ話を何度もしたりして、友人達から『お前、ボケてきたんじゃないか?』と言われだす始末だった。
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