0人が本棚に入れています
本棚に追加
テレビで日付を確認すると確かに過去に戻っていた。ただ、漠然と過去に戻りたいと願ったのでどの辺りの自分なのか、はっきりしなかった。
「俺はここで何をやり直せば良いんだろうか……」
はっきりしない頭で、何をしたら良いのかわからないまま、その日は一日が終わってしまった。
「どこだ、どこなんだ……」
虚ろな頭で俺はどこかにある、分岐点を探していた。きっと、どこかにある筈の『幸せな家庭』への分岐点を……。
夜中にトイレに起きると、その日も両親は声を殺しながら言い争っていた。俺は急いで部屋に戻り、ベッドの中で泣きながら祈った。
「どこなんだよ!一体どこに行けば……!」
真っ暗闇の中、泣きながら強く願った。俺はただ行き先を知りたかっただけなのだ。
翌朝目が覚めると、今までとは明らかに様子が違っていた。靄の掛かったようなあの感覚がずっと強くなっていて、声を出すのがやっとだった。
「あ~、あ~、ぅんぶ~」
俺の目に映ったのは記憶の中にある母親の姿よりも、ずっと若い母親の姿だった。
(?!一体どういう事なんだ?!)
「はいはい、よしよし。ワタルはイイ子でしゅね~」
軽々と俺を抱き上げる母親。
(そんな!戻り過ぎたのか?!)
いまいちはっきりしない頭で考えたが、戻ってしまったものは仕方がない。未来にはやり直せないのだから……。
最初のコメントを投稿しよう!