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こうなってしまったらもう一度初めから人生をやり直すしかない。今度こそ一番良い人生を……。
「ママの事、好きでちゅか~?」
幸せそうに微笑んで聞いてくる母親に、俺は満面の笑みを返した。俺を抱きしめる母親の温もりを感じると、幸せな気持ちになれた。
「好きでちゅか~、そうでちゅか~。ママね~、ワタルが居たら、他に何もいらない……。ワタルもパパなんかいらないでしゅよね~?」
そう言った母親の目には涙が滲んでいた。
(ここでも……、ダメ……なのか……?)
自分の無力さに苛立ち、絶望感に襲われた。
(そんな!俺が産まれて喜んでたって、みんな言ってたじゃないか!あれは嘘だったのか?!)
「ぅあ~~~ん!」
叫んでも叫んでも、言葉にならなかった。俺の口からは赤ん坊の泣き声しか出なかった。
俺はどんどん頭がぼんやりしてきた。
「あら~?ワタルくんはそろそろおねむでしゅか~?」
「…………」
抵抗出来ない微睡みの中、母親の声がどんどん遠ざかっていった……。
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