Go,Back

16/17
前へ
/17ページ
次へ
こうなってしまったらもう一度初めから人生をやり直すしかない。今度こそ一番良い人生を……。 「ママの事、好きでちゅか~?」 幸せそうに微笑んで聞いてくる母親に、俺は満面の笑みを返した。俺を抱きしめる母親の温もりを感じると、幸せな気持ちになれた。 「好きでちゅか~、そうでちゅか~。ママね~、ワタルが居たら、他に何もいらない……。ワタルもパパなんかいらないでしゅよね~?」 そう言った母親の目には涙が滲んでいた。 (ここでも……、ダメ……なのか……?) 自分の無力さに苛立ち、絶望感に襲われた。 (そんな!俺が産まれて喜んでたって、みんな言ってたじゃないか!あれは嘘だったのか?!) 「ぅあ~~~ん!」 叫んでも叫んでも、言葉にならなかった。俺の口からは赤ん坊の泣き声しか出なかった。 俺はどんどん頭がぼんやりしてきた。 「あら~?ワタルくんはそろそろおねむでしゅか~?」 「…………」 抵抗出来ない微睡みの中、母親の声がどんどん遠ざかっていった……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加