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思い出すのに少し時間が掛った。そうだ、思い出した!大学に入ってすぐに付き合った女だ!
「久しぶり!」
多少のバツの悪さは感じたが、それでも俺なりに精一杯の笑顔で声を掛けた。
「あの……、どこかでお会いしましたか……?」
声を掛けられた彼女は不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「え……?!」
何かがおかしい。確かに彼女とは合コンで知り合って、それから……。
「どなたかと間違えてらっしゃるんじゃありませんか?」
採用試験の会場だけあって、丁寧な物言いではあったが、明らかに不審者を見る目で彼女はその場を離れていった。
「おかしいな?確かに……」
そうか!確かに付き合ってはみたけれど、あまりにも料理がヘタで別れたんだった。きっとその時の事をまだ根に持っていて、知らないふりをしたんだ。
筆記試験を終えて面接を待っている時に、俺は彼女を探して近づき、声を掛けた。
「あれから料理は上手くなった?」
その次に俺が見たのは、真っ赤になって怒る彼女と、騒ぎを聞きつけてやってきた、体格の良い警備員と制服がはち切れんばかりの警備員だった。
二人の警備員に脇を抱えられ、俺は警備室に連れていかれた。
「今回はご縁がなかったという事で」
人事部のお偉いさんだという男が警備室にやってきて、ひと言俺にそう言った。
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