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1、はじめに
「月日は百代の過客(かきゃく)にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして、旅を栖(すみか)とす。」
この名文は誰もが知っている芭蕉の「おくのほそ道」の冒頭の名文である。
感銘ある言葉の響きは、哲学を秘めた生死観であり、凝縮(ぎょうしゅく)された人生観である。
紀行文は見聞録として江戸時代中期の陸奥、北陸などの地方の世相、世情を後世に伝える歴史の確認の指標である。
古人の足跡と古歌、神話の説話や西行の歌枕(うたまくら)を辿りながら、時には杜(と)甫(ほ)の漢詩の一節を思い出しながら、俳諧の人脈を通じて名所、古跡の奥州と、その時代の情景、日々の暮らしとその光景が、紀行記述が俳諧(はいかい)を通じて味わい深い言葉で綴られている。
感性に満ち溢れた美的表現の枠を極めている。この最初に出てくる冒頭文で全体の作者の思いが察知できると言うものである。
また芭蕉は流派や大店の旦那衆の句会の連歌の集まりに、机上の俳諧より、広い世間に見聞する為に、身の危険も顧みず、未知の世界のみちのくの旅へ、思い立たせたのではないだろうか、それは芭蕉の気宇(きう)壮大(そうだい)な自然と人々の日々の生業と森羅万象の移り変わりを句に表すことに意図とした旅でもあった。
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