芭蕉紀行漂泊の憧憬  2

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 これは紀貫之が自分たち撰者のことについて述べたもので、自分たちが和歌に用いる言葉は、いつも春の花のような美しさに乏しく、歌詠みと世間から呼ばれながらもその実力の伴わない有様に、長い秋の夜も眠れずに悩んでいるということであるが、この「まくらことば」というのは今でいう枕詞のことではなく、和歌において通常使われる言葉すなわち歌枕のことである。  ただしこの古い時代の歌枕には、現在でいうところの枕詞も含まれた。平安時代の僧侶で中古三十六歌仙の一人でもある歌人の能因法師は、『能因歌枕』という書を残している。これは当時の歌枕とされる言葉を集めたものであるがそこには、「道 たまほこといふ、(以下略)」
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