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優愛は店から出ようと、勢いよく開けたドアの向こう側に見たことがある女性を認めて、動きをとめた。
この人確か……歩の所に居た人。
付き合い出したのはこの人か。
むすっとして外に出た優愛はゆっくり閉じていく扉の前に立って、女の前に仁王立ちになった。
「歩なら居ないけど?」
突然ケンカ腰に言われて、真琴は眉間に皺を寄せた。
「そう、教えてくれてありがとう」
「彼女?」
なんとも単刀直入な言葉だと真琴は思ったが「あなたが誰なのか知らないのに、答える必要ないと思うのだけど」と静かに返した。
すると優愛もまた眉間にしっかりと皺を寄せて見せた。
「彼氏がカナダに行っちゃってても余裕なんですねぇ。歩ってモテるのに」
カナダ……。
目の前の女の子が言った言葉に動揺したが、真琴は出来るだけ表に出さないように冷静を装った。
「あなたは北川歩さんとどういった関係なの?」
「付き合ってた。私は今も好きだけど」
真琴はその女の子のくいっと上がった猫のような目を見つめていた。
若いって言うのはとても真っ直ぐで、隠すことを知らないんだと、少しだけ自分が年を取ったような気持ちになってそっと視線を外した。
すると、右手の甲が見えて、無鉄砲さは自分もあまり変わらないなどと思ったりもする。
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