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「ちょっと待って、じゃあ仕事は困ってないの?」
太ももを上がろうとする歩の手を捕まえて、真琴が聞くと「全く。バーに行くのはあそこが好きだからなのと、一応何かしておくべきだと思ってるから。あそこは俺の店だし」と答えて、真琴の唇に唇を重ねる。
でも、真琴は無理やりそれを剥がして、身体を反らせた。
「CMがながれるとバーにますます行きにくくなるけど……」
「真琴も仕事してないなら、二人でしばらく部屋にこもるのもいいじゃない?」
「私は仕事見つけたいよ。趣味とかないし……」
見つめ合う二人。
歩が困ったような笑顔を作った。
「例えば一年、真琴が長い休暇を取ったとしても、誰も文句なんて言わない。一緒に飯食って、趣味がないなら俺がスノボでも料理でも教える。で、疲れたら同じベッドに入って微睡んだらいいじゃんじゃね? 生き方は一つじゃない。一所懸命働くのも悪くないけど、たまに立ち止まってもいいと思うけど」
立ち止まる……真琴は自分がきっと不安な顔をしていることは分かっていた。
そんなこと自分にできるのだろうか。
歩がそれを察して「怖い?」と顔を傾げる。
真っ直ぐな吸い込まれるような瞳に、真琴はためらいながら首を振った。
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