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「怖くない」
言葉にした時ははっきりと口にできた。
歩の生き方はとても魅力的だし、羨ましくもある。
歩はそっと微笑んで唇を落とす。
二人の唇が重なった時、真琴の部屋からスマホが騒いでいる音が聞こえてきた。
それは執拗に音楽を鳴らし、なかなか諦めてくれない。
だから、とうとう真琴がため息交じりの甘い息を吐いてから「電話でなきゃ」と呟く。
「いいじゃん、後で」
歩はそういうけれど、呼び出し音は真琴が出るまで絶対あきらめないと言う心意気を感じさせるくらい、いつまでもなっている。
歩も眉間に皺を寄せて、真琴から体をずらして、真琴の部屋の方を見た。
「……しつこい」
「うん……ちょっと出るよ」
タオルを巻いただけの真琴が自分の部屋に入って行くので、歩は仕方なくリュックの中にある洗濯物を取りに向かった。
真琴はベッドの上に放り出して置いた騒ぎ立てるスマホをとりあげて、掛けてきている相手を確認した。
陽太。
見下ろしたまま通話ボタンを押して耳にあてがう。
「もしもし?」
「真琴。何回鳴らしたと思ってんだよ。出てくれよ」
陽太は少しだけ怒っている。
でも真琴だって歩との時間を邪魔されてちょっと嫌なのに。
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