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「どうしたの?」
真琴がお風呂場に歩いていきながら、電話の相手、陽太に問う。
「どうしたの? じゃないだろ。お前が昨日瀬戸さん殴っちまうから、急遽今まで調べてきた分を持って上に報告したんだよ。瀬戸さんずる賢い手管をさ」
「あ! 報告したの? 上はなんて?」
驚いた真琴の声に、先に洗濯物を置きに来ていた歩が脱衣所から顔を覗かせる。
問いだけな歩に、真琴は視線だけで大丈夫だと伝えた。
「いろいろ裏付け取りたいから、とりあえず真琴の話も聞きたいってさ。すぐ来れるか?」
歩は自分の体を見下ろして、直ぐって言うのはちょっと無理があると感じて「えっと……直ぐ? 行くのは行くけど」ともごもごしていると、歩が真琴の元へと来て耳元に口を寄せる。
「午後行くって言えばいいじゃん」
言い終えて、剥き出しの肩に軽いキスをした。
甘い囁きに小さく照れ笑いをして電話の向こうで待っている陽太に返事をする。
「午後には着けるようにするから」
「それ最速? もっと早く来れないの?」
「最速。でも必ず行くから」
「あー、じゃあまあ分かった」
急いている陽太はすぐに電話を切った。
だから、真琴もスマホを持った腕を下ろす。
そして、歩を見上げて、笑みを浮かべてぱさっとタオルを床に捨てた。
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