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そして冬
真琴は歩の腕の包まれて、リビングのソファーでテレビを見ていた。
歩が真っ白なゲレンデで光を受けて優雅に旋回するCMを食い入るように見つめていた。
何度見ても、感動する。
CMを見て涙腺が緩むなんて今までなかったのに。
「真琴、新しい会社春からだっけ?」
歩がテレビのリモコンを持った手を伸ばし、ぷちっと画面をオフにした。
「うん、いろいろあったけど穏便に退社できたし、有給消化させてくれるってことになったから」
歩が真琴の髪の中に顔を埋める。
首にかかる歩の息が少しだけくすぐったい。
「沖縄でさ、マリンスポーツとかやりたいんだけど、いかね?」
「あー、うん。私、運動そんなに得意じゃないよ?」
「イルカと一緒に泳いだりとか……」
「イルカ! 一緒に泳げるの?」
真琴がイルカに過剰に反応して顔だけ振り返ると、間近に歩のスッキリとした切れ上がった目があった。
「らしいよ。一か月くらい沖縄行って、そのあとは俺は一旦カナダ」
歩の言葉に興奮を収めて、ちょっとしゅんとしてみせる真琴。
「またすぐ帰って来るし、カナダに行かなくても済むように拠点をこっちに移すよ」
うん。と真琴が返事をした。
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