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そんな時、陽太は決まって真琴に笑顔を向けて言った。
「気にすんなって、俺はお前の事わかってるから。な?」
分かってくれているなんて、理解を示されたことが嬉しくて、そしてグイグイと追い込まれるように付き合いだして、三年。
酔っぱらって陽太が別れを切り出すまで、真琴は陽太の本心を知らなかった。
「仕事ができるからって見下して」
そもそも、陽太が年下の社員とやたら仲良くしているから……ホテル街を歩いていく姿を見てしまったから、聞いてみたら、返って来た答えがそれだった。
「いいよ、別れよう。俺、あの子と付き合うわ」
そう言ったのは陽太だったのに、なぜか今、真琴のベッドで当然のように寝ている。
もちろん、ただ寝に来たのだろうけど、なぜ私のベッドを明け渡さなければならないのかと言う怒りがふつふつとわいてきていた。
十一月だ、布団がなければ寒くて眠れないのに。
このままじゃ、きっと終電を乗り過ごすたびに陽太は当たり前のようにやって来て、泊まっていくだろう。
そういう男だもの。
境界線が曖昧な人だから。
真琴は、ぐっと唇に力を入れてスマホを取り上げ、不動産会社のホームページにアクセスした。
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