788人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
「まじ、ドタキャンすまん」
歩は体の大きい高遠が小さくなって本当に悪そうに謝って来るのを「いいから」と、制する。
それでも高遠の方は気が済まないらしく「ルームシェアの相手は俺が絶対探して見せるから」と、デニムのパンツからスマホを引っ張りだして、フローリングに正座のまま、そこに熱心に文字を打ち込んでいく。
歩は白地に赤い細い線が入ったソファーに胡坐を掻いたまま、ため息を吐きながら向かいの壁に掛けてあるテレビに視線を戻した。
「条件は一緒でいいから」
一所懸命な高遠に言うと、高遠は下を向いたまま頷いたのが分かった。
本当は今日、この高遠がこの部屋に引っ越してくるはずだった。
狭いが互いにプライベートな空間を確保できる、2LDK。
六畳が二部屋に、十一畳のリビングダイニング。
風呂トイレは別々になっているし、駅からは十分と言う立地だ。
東京と言うには少し都心から離れているが、それでも電車なら乗り換え一回で済む。
最初のコメントを投稿しよう!