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「俺もここ住みたい! 部屋一部屋余ってるんでしょ? ルームシェアしようぜ」
そう言ったのは遊びに来た高遠だった。
それもありかと思った歩が承諾したのに、今日になって高遠は引っ越して来られなくなったと言い出した。
「彼女がなんでうちに来ないで男友達選ぶんだってさ……めっちゃ怒られた」
体はデカいし、ややいかつい顔をしているのに、高遠は彼女に頭が上がらない。
それは随分前から知っていたし、それならそれで別に構わないのに、高遠は「家賃高いだろ? 俺が一週間以内に相手探してやるからな」と謎の使命感に燃えて、そして今現在スマホで格闘しているところだ。
「歩ってさ、イケメンじゃん? だから嫌なんだと」
高遠は俯いたまま話し出す。
「は?」
「ああ、別に俺たちがどうにかなるって意味じゃなくて、歩目当ての女が押しかけてきたら、あんた食っちゃうでしょって。
それに、女連れ込み禁止、彼女もダメって条件が怪しいってさ。
『そんな事言って私を部屋に入れなくして、歩のおこぼれ貰うんでしょ』って怒っててさ」
歩はテレビに映るスノーボードの大会の様子を眺めて返事を返さなかった。
「あいつだって始めは歩目当てだった癖にな」
「……知らねぇよ」
歩が面倒臭そうに言うと、そうなんだって。と、言ってから顔を上げた。
「逆に女の方がいいんじゃね? シェアする相手」
歩が横目で視線を送ると、高遠の真面目な顔に行き当たった。
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