つばめのアルバイト

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つばめのアルバイト

 わたくし、墓尾つばめは久しぶりにアルバイトで、コンビニの店員を華麗にこなしております。  実は以前にも、別のコンビニでアルバイトをいたしたことがございますのよ。  わたくしったら、お客さまのためにと、ママ手作りの白菜キムチを並んでおりますお弁当やサンドイッチにそっと忍ばせました。  カッターナイフとメンディングテープを駆使し、誰にも気づかれずにおすそ分け。  さすがは、つばめでございます。  あらあら、お客さまよ。  わたくしはレジに立ちます。  いらっしゃいませぇ。  ピッ、ピッ、ピッ、とわたくしはバーコードリーダーを、まるでオーケストラのコンダクターのごとく操ります。  お待たせいたしましたぁ。  以上四点で、二十五万と六千二百円でございま~す。  はぁ?  なぜ、雑誌二冊とお弁当にペットボトルのお茶で、二十万円以上も払わねばならないかとお尋ねでございますのね。  はてさて、これは難問よ、つばめ。  わたくしは頭脳をフル回転。  そうね、一度ご破算にして、最初からやり直しが得策ね。  わたくしは姿勢を正し、商品を読み上げながらレジを直接打ち込むことに。  ひとつめ!  賞味期限が切れて値下げをするであろうと狙ってきたのに、まだ値下げ札が貼られていないけど、言いがかりをつけるようで恥ずかしくて言えない、幕の内お弁当!  ふたつめ!  さらに、みっつめ!  マンガ週刊誌の表トビラをこれみよがしに上にして、さりげなく、当店にはいまだに陳列している愛読書のアダルトな写真月刊誌!  よっつめ!  えっ?  頼むから大声で、根拠に乏しそうだけども、はずれではない購入理由を言うのはやめてくれと?  いえ、お客さま。  わたくしはレジの責任者といたしまして、なぜ間違った金額がレジに提示されたのかを徹底的に追究いたしたく……  えっ?  現金の持ち合わせがないから、先ほどの二十万なにがしかをカード決済してくれと?  よろしゅうございますのかしら。  あい、承知いたしました。  ではカードをお預かりいたしまぁす。  こうして今日も元気にアルバイトにいそしむ、つばめでございまぁす。                                 つづく
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