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「ばら、見える?」
〔 うん。次は十二歩前進して、二つ先の左に曲がって。 〕
木々の間を素早く通り抜けた私は、暗い路地裏でばらの指示に従って歩いていた。
さっき、ばらお手製のコンタクトを着けたから同じ景色を共有している。
ほんと、どうしたらこんなのが作れるのか不思議で仕方ない。私なら絶対、飽きてどっかにぶん投げてる。
「とーちゃーく。次は?」
〔 ……残り五歩で時計台の裏だよ。 〕
耳元の無線機ごしにばらの声が小さく聴こえた。
ここが…。……、ぁ……。
手を握りしめて、前進する。ゆっくりと時計台の裏にある扉へ近づくと中を確認した。
確認できて四人。
〔 はり、気を付けて。 〕
うるさい心臓の音が指先まで振動を伝える。ばらの小さな声を聴きながら、無意識に震える足を抑えた。
………ペキッ
あ、ヤバい……。
枝の折れる音を聴いて四つの厳つい体が振り返る。
背中を一筋の雫が落ちてった。
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