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 首元がよれたチュニックに着古したジーンズ。くすんだ顔色に、がさがさに乾いてひび割れた唇。  美容院に行っていないのだろう、不揃いに伸びた髪は、パサパサに痛んでいる。  母親がアパレルの仕事をしているだけあって、里香は昔からお洒落な子だった。 流行をさり気なく取り入れつつも、自分の体にぴったりと合う服を着て、メイクだけでなく髪や爪の手入れを欠かさないような子だったのに。  上の子を産んだ時は、もう少し小綺麗だったと思う。  子育ては大変なんだ。 いくら夫や母親が協力的でも。  まるで対岸の火事を眺めるように、やつれた従妹を他人事のように観察している自分に気付く。 「そういえば早苗ちゃん、主任になるんだって?」  思い出したようにそう言って、里香は「おめでとう」と破顔した。  邪気のない笑顔と祝福を向けられ、とたんに胸の奥から罪悪感が滲みだしてくる。  父親の言葉が脳裏によぎった。 クリスマスケーキ。  世間が私と里香に優劣をつけるとすれば、劣の烙印を捺されてしまうのはきっと私の方なのに。 「ありがとう」  自分がちゃんと笑えているか、自信がなかった。  仕事ばかりの毎日で、気付いたら三十を超えている。 仕事にすがりついている自覚はあった。  お世辞にも待遇がいいとは言えない職場だが、プライトや人生を賭けられるならそれもいいかもしれない。 「すごいね、三十で主任なんて」 「たいしたことないよ。うちの会社、人の入れ替わり激しいから……」     
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