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「ほら」
「……え?」
食べるでもなくスプーンを差し出す課長に、
首をかしげる。
「早く口を開けろよ。
こぼれるぞ」
意味が分かり、
みるみる頬が熱くなってきた。
「な、
なんで食べさせて貰わなきゃいけないんですかっ」
「責任を取るって言っただろう。
ほら、
あーん」
唇の先に、
ひやりとしたケーキが触れる。
反射的に口をあけると、
課長はスプーンを中に挿し入れた。
「んぐ……おいし……」
美味しさと恥ずかしさの間で揺れていると、
課長が満足げに笑った。
会社で浮かべる穏やかな笑顔の三割増しだ。
「美味いか? よしよし、
もう一口やろう」
「ちょ待っ……むぐ、
おいひぃ」
ひな鳥のように反射的に口を開けてしまう自分が悲しい。
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